いろいろと心当たりはあるし、愛すべき切ない登場人物のお話がぐっとくるので勢いで引用してしまいました。反省はしていません。たぶん飲み会とかで話すとうけるはずです。

――以下引用

小人論――暴走する片思いのメカニズム

「白雪姫と七人の小人たちの法則」

仮に男女比8:2、計10人のサークルがあったとしましょう。

多くの場合、2名の女子のうち明るく積極的なほうの女子が8人の男子の内のひとりと付き合い始めます。この女子をここでは[白雪姫]、と、男子を[王子]と呼びます。では残された7人の男子は、もうひとりの女子に殺到するのかというと、意外とそうでもありません。ここでこの7人の男子たちはむしろ[白雪姫]にとってのナンバー2の座を占めるため、その取り巻きと化すケースが多いのです。つまり[姫]にとっての[小人]になります。(このとき[姫]はサークル内で[王子]と付き合っていることを隠しているケース、サークルの外に[王子]がいるケースもままあります。)

残されたもうひとりの女子はとうぜんこの状況が面白くありません。したがって彼女は[姫]の八方美人さを非難することになります。そう、彼女は[魔女]の役になってしまうのです。この場合、[小人]たちの多くが[姫]の歓心を買うために[魔女]をサークルから排斥しようとします。もちろん、そんなことをやっても[白雪姫]は[小人]を[王子]に昇格させることはまずあり得ません。それでも[小人]たちは勝手に盛り上がり、忠誠の証として[魔女]を排斥するのです。

しかしほんとうの悲劇はここからはじまります。[魔女]を排斥し、サークル全体にとっての悪役を失ってしまったあと[小人]たちの満たされない思いはどこにそのはけ口を求めるのでしょうか。歴史が教える通り、共同体はその外部に敵を求めることで強い団結を獲得します。しかし外敵への反発のもたらした団結が強ければ強いほど、その外敵を失ったあとの反動は強いものです。[魔女]を排斥した[小人]たちは、たいていの場合[小人]同士の内紛をはじめます。それも、[王子]の座をかけたバトルロイヤルではなく、筆頭[小人]――すなわち[姫]にとってのナンバー2の座をめぐるバトルロワイヤルを開始するのです。そしてサークルはクラッシュしてゆくことになります。

以上が、二〇〇一年頃ある批評家(当時はまだ善良な一学生でしたが)によって発見された人類普遍の法則――「白雪姫と七人の小人たちの法則」です。一説によると、全国の文化系サークルの崩壊パターンの役78.6パーセントがこの法則に当てはまるそうです(惑星開発委員会調べ)。

しかしここで重要なのは、自意識過剰な年頃の男女がローカルな人間関係で承認を得ようとするあまり空回りするというありふれたことなどではありません。ほんとうに重要なのは、[小人]はどんなにがんばっても――[魔女]を撃退しても他の[小人]たちとの抗争を勝ち抜いても[王子]にはなれないということなのです。

ディズニー映画『白雪姫』に、[姫]のベッドサイドに、七人の[小人]たちがずらりと並んでるという場面があります。彼らは一様に[姫]に好意をもっています。[姫]もまた、[小人]たちに優しく接しているものと思われます。だからこそ[小人]たちも[白雪姫]のことが大好きなのです。 しかし、[姫]と[小人]たちの関係は決して対等ではありません。

なぜならば[小人]たちが[白雪姫]が好きなほどには、[姫]は[小人]たちのことが好きではないからです。彼らは一様に手を揃えて置き、決してベッドの中の白雪姫にその手を伸ばしません。彼らは[小人]である限り、決して[白雪姫]にとっての恋愛対象にはならないのです。[小人]たちはみな、[姫]に恋愛感情を抱いて付き合いたいと思っているのに対し、[姫]は[小人]たちの誰にも恋愛感情は抱いていません。[姫]にはほかに[王子]がいるのですから。

しかし恋する[小人]たちはどうでしょうか。童話の中でこそ、[小人]たちは[姫]と[王子]との結婚を祝福します。しかし、実際はどうだったのでしょうか。[小人]たちはおそらくは何ヵ月もの間、[姫]と共同生活を送り献身的に尽くしてきたはずです。彼らのうち、比較的冷静かつ聡明な何人かは、自分が恋愛対象ではないこと、[王子]ではなくあくまで[小人]のひとりでしかないことに自覚的だったはずです。しかし、それでも彼らは誰一人として[姫]への献身を捨てなかった。それはなぜか。[姫]の優しい態度と、同居による近接性の高さが、「いつか自分に振り向いてくれることがあるかもしれない」という可能性を[小人]たちに信じさせていたからです。そして[小人]たちは多くの場合、[王子]が[姫]に口づけし、ふたりが結ばれたその瞬間にはじめて、自分が[小人]であること、いや[小人]でしかなかったことに気づくのです。

本連載の目的はこの[小人]たちの救済にあります。[小人]は決して[王子]になれない。しかしそのことに気づかない、いや気付かないふりをし続けることで希望を得て、プライドを維持する哀しい生き物なのです。

そして……この[小人化]は決して他人事ではありません。みなさん、胸に手を当てて考えてみてください。この人は自分に気があるんじゃないかという希望的観測のもとに、相手の都合のいい中距離にコントロールされてしまったという経験がある人は案外多いのではないでしょうか。私たちの入手したとあるFBIに連なる筋の極秘資料によると、日本人の20代~50代男性の実に66.2%が、女性の29.1%が、この「小人化」を経験しているとアンケートに回答しているようです。この数字に顕著に表れているように、一般的に「小人」化は男性の女性に対する片思い感情から発生します。しかし、主に職場での既婚男性とその部下・後輩の独身女性との関係性において女性の「小人化」も珍しくありません。

そう、現代社会においては誰もが小人(リトル・ピープル)になり得るのです!

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