Webサービスの立ち上げ基準

Webサービス立ち上げの段階で相談をいただくことがあります。立ち上げの段階といっても、何かしらイメージが固まっている場合がほとんどで、そこに向かうための情報や力を求めて声をかけてもらうことがほとんどです。とてもエネルギーに満ちあふれていて、お互いが描いているものの確認や情報交換から始まります。

Webサービスの立ち上げ基準として、明確に意識しているものがあります。「そのサービスはGoogleの検索結果よりもクオリティの高い情報を得られるか」です。Googleで検索した方がよほど良い結果が得られるのであれば、そのサービスはやる価値がないと考えています。「クオリティの高い情報」と加えたのは、他のサービスに比べて情報の数が多いだけ、あるいは情報の信頼性が不確かなものが得られてもそこに価値はないからです。

Webサービスへのアクセスのしやすさ

新しいことを始めようとするとき、まずはその道を十分に慣らすべきです。たとえば楽器を始めるのであれば、可能な限りケースから出してすぐに楽器に触れるようにしておくことは大切なことですよね。物理的な障害はそのまま習慣づくりの障害になります。

同じように、Webサービスを利用しようとするときアクセスに時間がかかったり、いつも冗長な選択を行う必要があるなど、障害になるものがあると人は簡単に離れていきます。どんなに良いサービスであっても動線の美しさに欠けていては習慣化されるのは難しいです。水を飲むように当たり前にアクセスできる動線とデザインが必要です。

成功体験

WebサービスやWebサイトは、アクセス数や滞在時間を増やすためだけに運営されるものではありません。Webサービス立ち上げ基準としてもうひとつ持っている指標は「そのWebサービスは、お客さんに成功体験を提供できるか」です。

成功体験のないところに人はリピートしません。そのサービスによってどんなことが解決されて何を得られるか、ちゃんとサービスを必要としている人の所に情報を提供できているかどうか。コンテンツの質が高くて量もある。更新頻度も高くてとても満足する内容だった。また来てみたらまた満足した。そういう成功体験を継続して提供できるのが価値あるWebサイトの1つの形だと思います。

成功体験をゲームとしてとらえることもできます。小さな成功体験にストーリー性を加えて、常に次の目標へと誘導していく方法です。これをゲームの世界ではレベルデザインといいます。ある程度使ってもらわないと良さが伝わらないサービスの場合は、こういった方法も検討していくのが良いと思います。

1アイデアを立体的なアイデアに

木は主根だけでは安定して立っていられないように、Webサービスも1アイデアだけで運営するのは難しいです。多角形で立体的に根を張っていくのが健全なサービスだと思います。たとえば、「服を作って売る」のは1アイデア。さらにアイデアを膨らませていくと…

  • ショップに卸して販路を広げる
  • バイヤー向けのクローズドサイトを運営する
  • それぞれの体型に合わせたオリジナルの服を安く作れる仕組みを作る
  • 編み機を各地に置いて普及させることで、まるで写真を印刷するように服を作れるような仕組みをつくる
  • 溶かして再利用できる繊維を開発する
  • さまざまなデザインの服のデータを購入できるサービスを立ち上げる
  • 美容師など、服を買いに行く時間がなかなか取れない職業に向けてコーディーネート提案を含めた定期購入サービスを始める
  • 服のレンタルサービス

少し極端に書きましたが、こうやって業界全体を盛り上げていくことであったり、既存の枠組みを超えて他分野のサービスと繋げていき、全体がうまく循環して回っていく仕組みづくり。1アイデアを立体的なアイデアへと形成していくことが必要です。これらのアイデアは実行してはじめて価値があるものだと思います。

劣化コピーは作らない

他社がやっている既存サービスに何か付加価値を足して、自社のサービスとして差別化するというケースがありますね。すでに何年も運営しているサービスをリニューアルする場合はまだ良いのですが、新規サービス立ち上げの段階から他社ばかり意識しているのでは、せっかくの限られたエネルギーがもったいないです。

何か事情があってやらざるを得ないか、虚栄心や劣等感など特別な感情から行動が起こっているのではないかと自問自答してみるべきです。付加価値や差別化はしっかりとお客さんの方向を向いているべきです。ユーザーのライフスタイルの変化そのものが競合となりうるので、競合は他分野にいると考えてみることも必要なことだと思います。Googleや競合他社が役割を果たすようなことをわざわざ再構築して劣化コピーを作るのなら、そのエネルギーをもっと他のことに使った方がいいよねということです。未来に背を向けたサービスにならないように。

きっと多くの人が感じているように、実際には「Googleの検索結果よりもクオリティの高い情報を得られるWebサービス」ばかりではありません。「クオリティの高い情報」というのは、「純度の高さ」でもあります。一次情報には価値があります。経験から導き出された想いには価値があります。人は自分の経験からしか学べないのだから、他人の経験を語ったところで何か大切な部分が抜け落ちてしまうのでしょう。

モジュール化

アイデアはたくさんあって良いと思うのですが、1つのWebサイトに複数のサービスを詰め込むべきではないと思います。1つのサービスが最小のモジュールとして存在していて、その1つ1つのサービスが役割を補い合ってい大きな成功体験をもたらすものであるべきというのが最近の流れだと思います。モジュール化やマイクロサービス化という言葉で表現されています。

最初から大きく作ったサービスはその後の変化が難しく、立ち上げにも時間と大きな労力を必要とします。それよりも小さなサービスをより早い段階で立ち上げて、チューニングを続けながら運営して行くことの方がより大きな価値を持つことが多いでしょう。

本当に売りたいものは何か

立体的なアイデアがビジネスとして回り始めたら、コアな部分を育てていきます。「ブランド哲学として実現すべきこと」と「ユーザーの志向と市場の存在」が十分に組み合わさるところに本当に売りたいものが出てきます。たとえば頻繁には売れにくい服を売っているが、その高い技術力を理解してもらい、OEMの受注生産やコラボ商品の開発、生地を買いたいと言ってもらえたら成功だということも起こりうるのです。山の上流の水路を整備することで平地の土地を潤す。自社のサービスをもうひとつ上位概念でみてみる、視点の高さは大切だと思います。

必ずしも自分でやる必要はない

たとえば人類を一歩前に進めるような(そこまで大げさじゃなくても)すばらしいアイデアがあったとき、必ずしも自分ですべてをやる必要はないのだと思います。アイデアを誰かに話したり、どこかに発表することで流れができることもあります。これはここ数年感じていることです。自社でサービスを立ち上げるべきか、他社と協業して行うべきかなど、視点の高さが大切です。情報はクローズドにしないでどんどんオープンにしていくべきです。

ネット上で評価されるということ

たとえばYouTubeに動画をアップしたり、Amazonに電子書籍を公開したりなど、世の中に出るというのは必ず一定数の悪い評価がつくということでもあります。その仕組みはシンプルで、レビューを投稿しようというエネルギーが起こるのは、怒り(嫉妬や虚栄心、劣等感も含めて)からくる場合が多いようです。満足している人はわざわざレビュー投稿をしない場合が多いので、ネガティブなレビューが投稿されたとしても、それは間違いなく誰かの心を動かしたということであり、最後までしっかり観てくれた上にテキストまで打ってくれているのだということです。これは愛のかたちですね。

魅せ方をチューニングする

日本人に向けたサービスなのか、海外に向けたサービスなのか。海外に向けたものであればその国の人に伝わるものか。価値観や文化などによって、色使いやアイコン、デザインなどがこちらの意図しない意味を持ってはいないか。日本人に向けたサービスであれば、日本人がみて共感を生むビジュアルになっているか。サービスのグローバル化は欧米文化を標準とすることではなく、それぞれの国の文化にあわせてチューニングしていくということです。

日本人は世界的にみて少し特殊なようで、アプリのUIや使い勝手が少し変わったくらいだとすぐに適応できる能力を持っています。しかし大きくUIが改悪された場合にはすぐに離れていく特性もあるようです。

Webサイトの目的

何年も前のお話ですが、ある企業の製品情報を束ねたサポートサイトがありました。そのサイトを一番利用しているのは社内のサポートセンターの人だったというデータがあったのですが、これは一度に複数の問題を解決していてすばらしいなと思いました。時には内部に向けたWebサイトを作る方が良い結果を生み出すこともあるということです。

よほど価値のあるWebサイトでない限り、そのWebサイトに毎日訪れてくれるようなことはありません。Webサイトは公開することよりも運営することに視点を向けるべきです。

たとえばグラフィックデザインの場合は納品、つまり印刷に向けてデザインを詰めていくという作り方をします。対してWebサイトの場合は作ってからがデザインのスタートとなります。なので、グラフィックデザインのやり方でWebサイトを作るとなかなか公開できなかったり、公開したままの状態で更新が止まることが多いです。

相談なんてタダだし、仕事の発注先をどこにするかなんて関係ないので、熱いものを持っている人はお気軽にご相談ください!

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