セルフマネジメント、マーケティング、ブランディング。約6年前に個人事業主として独立したときにその重要性を実感させられたものです。また、戦う相手を外部にではなく、早く自分の中に見つけることが自己成長の近道だということも知りました。それはつまり、自分は何が嫌いかを社会に叩き付けるのではなく、好きなものを社会に提示していくこと。自分の中にある足かせになるようなものは相手しないで、そこを超越したところにいることが、精神衛生を保つ秘訣ではないかと思っています。さらには、自分の嫌いなものをよしとすること。価値観の違いを愛することです。 ……分かりにくい? 要するにそんなのは人それぞれってことですよ。 村上隆、奈良美智を世に出したギャラリスト 小山登美夫さんの著書、現代アートビジネスを元に要約メモしておきたいと思います。
通常、現代アートの展覧会で作品が売れた場合、代金の半分がギャラリーの売上げとなります。ところが、僕と同世代のアーティストの展覧会をすると、作品価格が安すぎて、完売したとしても、とうていギャラリーの運営費をまかなえません。赤字です。「同世代のアーティストを手がけるためには、独立して自分でやるしかない」
小山登美夫ギャラリーの誕生ですね。

どんな作品でも、交換が成り立てばマーケットができ、お金の流れが生まれる

「よい/悪い」「好き/嫌い」と、「売れる/売れない」はまったく別の話。

ギャラリストにとって欠かせない要素は「展示空間」「アーティスト」「プレス活動」

空間づくりで大切なのが壁。作品の見え方が変わってくるので。現代アートを扱う場合は、木と石膏ボードの白い壁がベスト。それぞれの作品を見せるためには、スポットライトが必要。

アーティストはみんな、フリーエージェント制

マーケティングによって、良い作品や売れる作品が生まれるわけではない。「いついつ個展をやるので、それまでに何点の作品を納めてください」といったノルマを課すような契約は、制作の足かせになってしまう。1年か1年半前にアーティストに声をかけて約束をし、それ以降は進捗を確認する程度にとどめておく。

プレス活動

なぜそのアーティストを選び、展覧会を企画したかというアナウンスを行う。アーティストの生の声も大切で、プレスの新しい可能性でもある。

レオ・キャステリ

ギャラリストを定義する上で欠かせない人物。 ギャラリストには、アーティスト顔負けの個性派がそろっている。ギャラリー名のほとんどが個人名を冠しているのも特徴。ギャラリーとは、ギャラリストがアーティストと共演するライブステージ。ギャラリストは裏方ではなく、現代アートのパフォーマーのひとり。

アートの社会化=文化の構築

アートを買うことは、もちろんお金がないとできないが、アートを受け入れる文化的度量もあるということ。

商業主義と距離を置くか、結託するか

村上隆は積極的にアートを露出するツールとしてメディアを利用する。コピーライトを使って商業主義と結束してアートの付加価値を作り出そうとしている。 奈良美智は、いかに露出を抑えるかという消極的なプレス。広告を一切断る方向で商業主義からは距離をおいている。

村上隆、奈良美智が切り開いたクールジャパン

村上隆、奈良美智の以降の世代は、欧米のアートと比較して「これでいいのかな」と疑問を抱える必要がなくなった。文化が違うのだから、欧米の作家と同じものが作れるわけもなく、その必要もない。自分たちの固有の風土に根付いた表現をしても決してひけをとらないことを証明した。

加熱してきたアーティストの青田買い

GEISAI(ゲイサイ)、トーキョーワンダーサイト、アート アワード トーキョー、東京アートフェアなど、アーティストの卵が集まるところでの青田買いも増えている。

プライマリープライスとセカンダリープライス

プライマリープライスは、ギャラリストが新作をギャラリーに展示して販売するときに付ける値段。作品が初めてマーケットに出たときの値段。どの作家にも共通している価格設定の原則があって、それはサイズと素材。つまり同じアーティストが同時期に制作した同じサイズのペインティングはすべて同じ値段になる。 セカンダリープライスは、2回目以降の売買(二次マーケット)で付けられる値段。オークションでの落札価格や、コレクターが転売するときの価格。

アートのブランド化

音楽や映画の場合は、マーケティングを駆使して、どんな音楽を作ってどこに落とせば当たるかを計算した上でアーティストを売り出すことができる。ブランドを作るのはマーケティング。 アーティストの場合は、企画開発・生産といったところが生っぽいので、マーケティングが効きにくい。

「作品」であり「商品」である

アートが「作品」であると同時に、お金を介して取引される「商品」だけど、アートは「商品」である前に「作品」。世界に1点しか存在しないもの。

アートファンド

アートを対象に投資するファンド。基本的な仕組みは、投資家が出資し、ファンド運営会社が資金を運用し、利益は投資家に配当される。つまり、値が上がりそうな有望な作品を購入し、売却したときに生じる差益を配当するシステム。

アートのネットショッピング

タグボートなどのネット販売の最大の特徴は、値段が明確なこと。

批評が仕切る、金と権力

アートが社会と結びついていくためには、メディアが堅実に機能していることが大切。有力ファッション誌の動向は、シーズンのコレクションにも影響を与える。

アートの税制

日本では、公益性のある美術館や団体に寄付する場合、所得の4割まで控除を受けられる制度がある。私立美術館への寄付は課税対象外。相続税は、購入金額ではなく相続時の評価額に課税されるので、評価額が上がると相続者が苦しい。結局、税金を払うために作品を手放して海外に流出させてしまったり、納税を避けるために作品が隠されてしまい、個人所有の重要な文化財の所存が不明になってしまうことがある。

日本の美術館に、奈良、村上の作品がない理由

コレクションを持たずに企画展を見せることに終始するタイプの美術館が増えた。「質」よりも、まずは入館者数や売上げといった「量」を最優先課題としなければならなくなった。

作品を売ることは、アートを残していくこと

ギャラリストはマーケットを通して、アートと実社会との橋渡しの機能を果たす。作品を売ることは、アートを消費することではなく、社会に残していくこと。

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